人事と派閥
最近まで、マスコミは、安倍内閣を「お友達内閣」と批判してきましたが、
私は、これを、制度的な欠陥があって「お友達内閣」になっていると考えています。
以前、「小選挙区制度を導入したことにより、
派閥の力は激減し、相対的に、党執行部の力は増大しました」と書きました。
そして、その問題点を書きました(「競争 2004 1 29」を参照)。
しかしながら、最近の自民党政権を眺めていると、
さらに新たな問題点が発生していると思います。
人事においても、党総裁(首相)や党執行部の力が増大した結果、
人事システムが機能不全になっていないでしょうか。
人事において、派閥の推薦を一切無視して、
首相(総裁)が全部決めるということは、
首相が、党所属議員の人事情報を全部把握している必要があります。
しかし、そういうことは、現実問題として、不可能でしょうから、
どうしても、人事が、「よく知っている議員」に偏る傾向になるでしょう。
つまり、派閥の推薦を一切無視して、首相が全部決めるということは、
外見上は、「かっこいい。リーダーシップがある」と見えても、
結果的には、「側近政治」を招くことになるでしょう。
今風に言えば、「お友達内閣」ということになるでしょう。
(首相の交際範囲の限界が、人事の限界となるでしょう)
「側近政治」にしても、「お友達内閣」にしても、
内閣としての視野が狭くなることは、必然の結果でしょう。
よくて「独裁」、悪ければ「難局に際して右往左往」となるでしょう。
いずれにせよ、国民の総意とは言いがたい「政治的結果」を招くでしょう。
今さら、「派閥政治に戻れ」とは言いませんが、
だからといって、「側近政治」でも「お友達内閣」でも困ります。
公平な人事システムを考えるべきでしょう。
大臣が名誉職である時代は終わった以上、
能力ある人が登用されるように、公平で透明な人事システムを作るべきでしょう。
競争 competitive economic system 2004 1 29
企業の業績を見ていくと、
規制などで守られて、競争のない業界は、
政府に助けてもらっても、なお回復力が弱い。
競争がなくて、低迷している例を、ひとつ挙げましょう。
自民党という政党は、かつて、派閥の弊害を、マスコミから指摘されて、
派閥を解消する方向に動いてきました。
さらに、小選挙区制度を導入したことにより、
派閥の力は激減し、相対的に、党執行部の力は増大しました。
その結果、政治家が、小粒になってしまったと言えます。
田中、三木、福田、大平、中曽根という政治家に比べて、
明らかに、今の政治家は、小粒になっていると思います。
昔は、自民党という政党は、「ない」と言ってもよかったのです。
田中党、三木党、福田党、大平党、中曽根党という「政党」の連合体が、
「自民党」と称していたのです。
この中で、「政権交代」をしていました。
田中党がダメならば、三木党へと「政権交代」をしていたのです。
今は、自民党内にあった複数の「政党」がなくなってしまい、
「無競争」となってしまいました。
多くの議員は、党執行部の顔色を伺うだけの議員となってしまったのです。
そして、政治の低迷と、無気力が始まったのです。
確かに、派閥というシステムには、弊害が多かったのですが、いい面もありました。
競争をして、お互いの政治力を磨いていたのです。